誰に家を建ててもらうかは大きな決断です。
地元の製材所は地元の大工さん、工務店さんと関わりが深いです。日々新築材(柱や梁)を挽き、地域の建築のための材を納品しているからです。
ここでは、家づくりの主要な依頼先である『個人の大工・地元工務店』、『ハウスメーカー』、『設計事務所・建築家』について、それぞれの特徴や強みを考えてみます。
樋口製材は原木の挽きのみで家の建築は行っておりません。ただ、建築予定の地域が山梨県や近県なら、信頼できる大工さん・工務店さんをご紹介できます(問い合わせフォーム)。また、柱・梁など県産材の建材のご提供も承ります。
目次
新築、家づくりの方法は主に3つ
新築を建ててもらう依頼先は主に3つあります。
『個人の大工・地元工務店』
『ハウスメーカー』
『設計事務所、建築家に依頼する』
あくまで一般的なイメージなので、この通りとは限りませんが、各依頼先の強みは以下のようなイメージとなるのではないでしょうか。
それぞれの特徴ですが、
大工、地元工務店で家を建てる場合
地元の大工さんや工務店さんは主に地元の材を使って家を建てることが多いです。
メリット:柔軟な対応。太い材がスタンダード。地元の材を使って柱・梁を見せる建築も得意
腕のいい大工さんは、刻み、ほぞについての腕と知識を持っていることが多く、それゆえ、地域の材の特徴をうまく活かした家づくりが得意な方が多いです。また、修理やリフォームも柔軟な対応できます。
大工、地元工務店で家を建てる最大のメリット(と筆者が考えるのは)は、柱・梁などの見せ方を知っていること。大工さん、工務店さんは地元の製材所から材を仕入れている場合が多いため、できあがる家は柱や梁が太くきれいに見せるケースが多いのです。
間取りや家電のサイズに合わせた作り付け(壁面に固定して作る本棚、棚など)の造作も別途費用がかかることなく予算内でできることも多いです。造作に手慣れた大工さんが多いからです。床も地元の無垢のスギ、ヒノキ材仕上げなど、普通ならオプション費用でかさむところを当初の予算内で収めてくれる場合もあります。
こだわりをもって家を建てたいというのは新築を建てる人なら誰しも当てはまることだと思いますが、木の質感を前面に打ち出した雰囲気の家を作りたいという方には、個人大工さんや地元工務店さんはおすすめです。
注意点1:将来の保証の不透明性
保証は大工さん、工務店によって異なります。10年保証や期限を区切らない条件付き保証などあり、長く家を柔軟な対応でメンテしてもらえるのが基本です。
ただ、その大工さんに跡継ぎがいなかったり、工務店が後継者などの問題で廃業した場合、将来、家のメンテナンス(修繕、リフォームなど)が必要なとき、建築してくれた大工さんや工務店に見てもらえないリスクがあります。
そうなった場合、代わりの大工さんなどを事前に紹介してくれる場合もあれば、とくに紹介もされず、家主さんご自身で探さないといけないケースもあるようです。
注意点2:新しい建築資材への対応が遅い?
大工さんは昔からある古い技術には精通していても、新しい建築資材の流行などに敏感かどうかは人によるようです。
また仕入れ材という観点で見ると、大工・工務店は、ハウスメーカーのような大量仕入れルートを持っていないケースが多く、材などは地元材を使う場合が多いです。これはメリットですが、価格面で見ると材料費などでコストカットが難しいためデメリットと言えるかもしれません。ただし後述の通り、昨今の国産材の価格は低下しているので、国産材だから高くつく、ということもなくなってきているようです。
注意点3:大工以外の工事が別の場合がある
これはとくに個人の大工さんに新築を依頼する場合に言えることですが、水道工事、電気配線などについて注意が必要です。大工さんに依頼する場合、その仕事内容は以下の2タイプに分けられます。
①大工仕事のみを行い、水道工事や電気配線、塗装、水回りなどは別。施主さんが手配する。
②水道工事や電気配線、塗装、水回りなども含めて大工さんが職人さんを手配し、まとめて一棟を仕上げる。
①だと、施主さんが管理する必要がでてきますので、予算の見通しも立てづらく、またそれぞれの業者さん探しも大変です。②だと、大工さんが普段付き合いのある(=信頼の置ける)職人さんを集めて効率的に全体を調べてくれます。
基本的には、②のケースが多いですのであまり心配する必要はないかもしれません。
ハウスメーカーで家を建てる
メリット:モデルハウスや標準仕様が充実していて、予算感や家の外観、内観がイメージしやすい
規格にそった標準仕様があるため、納期やデザイン、価格を具体的に把握しやすい点がメリットです。また、モデルハウスがあるので家の仕上がり(内装や外装)を具体的にイメージしやすいのもメリットです。
また、ハウスメーカーは日々変わる建築業界の変化に敏感なことが多いです。新しい断熱材などの建築資材をいち早く取り入れる傾向にあります。
また、材を一括で仕入れるため、ハウスメーカーの方が材料費を安く仕入れることができるといわれています。
水回り、導線など細かいこともすべてハウスメーカーが対応してくれて安心の家ができるのもメリットです。
基本的に保証などもあらかじめ明確になっていて、しっかりしていて、完成後のケアも安心です。保証期間10年と設定されている場合も多く、それ以降は有料となる場合もあるようです。
デメリット:モデルやラインナップから大きく離れたデザインは難しい
ハウスメーカーによっては宣伝費や人件費などの経費がかかるので、材料費は安く仕入れられても、それが建築費の低価格化へ直結しないとも言われています。
また、モデルやラインナップから大きく離れたデザイン、構造は難しかったり、希望の変更などでオプション費用がかかる場合もあります。
設計事務所・建築家で家を建てる
メリット:モダンでオシャレな住宅が建てれる
デザインから建築、監督までやってくれるので安心です。金額は建築士によって違います。モダンな住宅、デザイン建築、デザイナーズ住宅にこだわりがあるなら設計事務所がおすすめです。
標準仕様はないため、密な打ち合わせが必要となりますし、施主側の勉強やこだありや家族のライフスタイルを建築家に伝えるための準備なども必要になりますが、それはむしろ施主さんの望むところでしょう。
デメリット:費用が高め(というイメージがある)
費用がやや高めで敷居が高いイメージがありますが、意外に予算も含め相談しやすいようです。
結局、家を建てるにはどこがいいか?
某口コミサイトでは以下のようなコメントが見受けられます。
「こだわりがあるならハウスメーカーがいい」(某大手質問サイト)
「こだわりがあるなら大工、地元工務店がいい」(某大手口コミサイト)
「こだわりがあるなら建築家」(某口コミサイト)
これらのアドバイスはすべて正しいと思います。
施主さんの考え方やご予算によってその答えは変わるからです。家へのこだわりは大工・工務店でもハウスメーカーでも実現できます。こだわりがなくても大工・工務店やハウスメーカーでイメージ通りの家は建てられます。家の導線、壁紙、キッチンの配置、床板を無垢にする、樹種へのこだわりなどは、基本的にはどこでも対応できることです。
大事なのは、上で述べたようなそれぞれのメリットと注意点を知った上で、施主さんが家に求めることを実現してくれる人を選ぶことですね。
この記事でも「大工・地元工務店」「ハウスメーカー」「設計事務所・建築家」という枠で分けてしまいましたが、そういった枠に囚われるよりも、担当者や大工さんとの信頼関係を重視し、この人なら信用できる、この人に家づくりを任せたい、という気持ちも大事にするといいでしょう。
家の構造、柱や梁の組み方、見せ方、地域材にこだわりがあるなら、大工・地元工務店がおすすめ
もし、家の構造、柱や梁の組み方、見せ方、地域材をどう活かすかにこだわりがあるなら、地元の大工・地元工務店という選択肢を重視していいのではないでしょうか。地元材の仕入れ先になじみがあり、昔からの在来工法を知る人が多いからです。
地域材を家づくりに取り入れたいなら、昨今の林業事情・建築事情を知っておこう
地域材を家づくりに取り入れたいなら、昨今の林業事情・建築事情を知っておけば、イメージ通りに家を建てられる可能性が高まると思います。
というのは、昔ですと、国産ヒノキの価格は高騰し、外材は安かったので、家の建築は外材が多かったですが、今は状況が違います。とくに家の骨となる木材については国内の事情はここ20年で大きく変わりました。
安くなった国産材。ヒノキの価格下落がとくに顕著
昔は高価だった国産材。実は、今は国産材の価格は下がっています(下図)。その理由は、
- 明治・昭和に植林された木が今切りどきを迎えたから
- 伐採・林業技術の効率化が進んだから
- 外材との競争
などです。
むかし檜(ひのき)は高級なイメージがありましたが今は、ひのきの柱や床板を使っても、外材とそれほど価格が上がらないことが多いです。ですので、地域により多少事情は異なると思いますが、全国的な傾向として、檜を始め、杉なども一般住宅に使いやすい状況になりました。実際に地域材で家を建てるケースが増えています。
図の解説:ピークの昭和54年あたりと比べると、ひのきの価格が1/4ほどになっています。昭和後半から1年ごとに国産材の単価は下がり続け、国産の杉やヒノキは外材と単価的にはそれほど変わらない状況になりました。
地元大工・地元工務店が地元材を使うのはふつうのことが多い。
ハウスメーカーさんの場合、たとえば『国産ヒノキ』を付加価値のある商品として扱う場合もあります。
ですが、地元大工さん、地元工務店さんはそれを付加価値として扱うことはあまりしません。
それが杉であろうとヒノキであろうと、原価こそ違いますが、近くにある手に入りやすい材(地域材)を使うことは当たり前です。そこに付加価値としてわざわざアピールすることはあまりないようです。もちろん大工さん、地元工務店でも米松、米杉、集成材を使うことも多いです。
田舎の水は都会に比べるとおいしいですが、だからといって田舎の人はわざわざ水がおいしいとアピールしないのと似ています。
もちろんヒノキは杉より5〜8割程度原価が高いので、仕入れ値はどうしても高くなります。
大工さん・地元工務店に頼む場合の疑問
大工さんだと地盤調査や電気、水道工事などもやってくれるのですか?
これもケースによると思いますが、大工さんに頼んだとして、施主さんが電気・水道工事を別途依頼しなければいけないというケースはあまりないと思います。施工前の地盤調査から内装、配線、外回りまで専門の職人に手配して完成できると思います。
ただし、はじめにちゃんと確認は必要です。
一戸建てに地域材・県産材を使いたいのですが・・・
大工さん、工務店さんに言えば、基本的には可能です。
ハウスメーカーなどは大量に仕入れるため購入先が決まっていて、地元の材を使って欲しいという施主の要望はなかなか通りにくいですが、地元材を昔から使っている地元工務店さんや地元大工さんならそのような要望も通りやすいと思います。
使う樹種、工法、購入季節によっても金額は変わるので一概には言えませんが、県産材と外材で建てるのでは費用面で昔ほど大差はありません。1996年くらいまでに比べると状況はだいぶ異なります。今後、地域の材を使って家を建てるケースは増えていくことが予想されます。
先人は昔からその土地に生える木で家を作ってきました。そのような時代は何百年と続き、その間にその土地土地独自の在来構法ができあがりました。今後その技術は失われていくと言われていますが、地域材、県産材を活用することでその技も継承されていけばいいと思います。
地元大工(地元工務店)は家の面倒を一生見てくれる?
よく、地元の大工さんにお願いすると、一生面倒を見てくれる、と聞きます。
それは確かにそうだと思います。内容にもよりますが、軽微なものならサービスになることもあるし、一般のリフォームよりも安くすむケースも多いようです。
ただし、その大工さんに跡継ぎがいなかったり、会社がなくなった場合には、将来的にそれができなくなるリスクもあります。
そうなった場合、家のメンテナンス(修繕、リフォームなど)が必要なとき、代わりの大工さんを紹介してくれる場合もあれば、とくに紹介されず家主さんご自身で探さないといけないケースもあるようです。
腕のいい大工さん、信頼できる工務店さんの見つけ方
探し方はいろいろあると思いますが、以下は一般的な見つけ方です。
知り合いに紹介してもらう。
知り合いに地元の大工や工務店を紹介してもらい、実際にその大工さんが建てた家を見たり、内覧に行ったするといいと思います。
県内の木材関係の団体が発行する雑誌を見る
「○○県 地域材利用」「○○県 木造住宅」「○○県 木造建築」などで検索すると、お住まいの都道府県の木造建築協会とか一般社団の建築団体が出てきます。たとえば「山梨県 木造住宅」と検索すると「一般社団法人山梨県木造住宅協会」が上位に出てきます。そしてここが発行している「やまなし県産材使いこなしブック2016」が以下です。
この雑誌は、やまなしの木の特徴や県産材で家を建てたケースが写真付きインタビュー付きで満載されている本です。巻末に「私はやまなし県産材を応援しています」というタイトルで、地元で地元材を使うことにこだわっている個人の大工さん、工務店さんが20社ほど紹介されていました。ちなみに、樋口製材でいつも材を買っていただいている大工さん、工務店さんも何社か載っていました。
もし地元の大工さんに家を建ててもらおうと考えているのであれば、こういう雑誌を読んでおくこともおすすめします。そのような本を覗けば、腕のよい大工さんを見つけられることでしょう。
見学会に行く
個人大工さんで見学会をしているケースはまれですが、工務店さんの場合定期的に見学会をしているケースが多いです。見学会に行くと、工務店さんが何にこだわっているか、材はどこのものを使っているかなど直接聞けるのでおすすめです。いくつか工務店さんを周り、比較するのもいいと思います。
製材所に聞く
意外におすすめです。普段からたくさんの大工さん、工務店さんが出入りしますので、施主さんのこだわりに合わせておすすめの大工さん、工務店さんをオススメできると思います。
ちなみに樋口製材に自分がはじめて訪れた日のことを今も鮮明に思い出します。
もう5年くらい前になりますが、子供の本棚を作ろうとホームセンターを回りましたが、自分が思い描く材がなく、ネットで調べて製材所に勇気を出して顔を出しました。すると樋口社長が自由に見ていっていいよ、と気さくに対応してもらい、それでも仕事の邪魔にならないようにと早めに材を選ぶと「もっといろいろあるから自分がいいと思うものが見つかるまでちゃんと見てけし!」と言ってくれました。それで完成した本棚は厚さ2.4cmの二段の杉無垢の本棚。今もまったくたわまず、もうすぐ小学生に上がる子供の学習机の横に配置される予定です。樋口社長とはそれ以来の付き合いとなりました。
『大工さん・工務店さんに新築を建ててもらうこと』のまとめ
腕のいい信頼できる大工さん(ないし信頼できる工務店さん)に家を建ててもらえば、自分の理想とする住みやすい家を適正な金額で建てることができます。
木の香りはいいものです。地元材で家を建てたいという方は、評判のいい大工さんや地元工務店さんに長年つながりのある製材屋に相談してみるのも手です。
樋口製材も、原木(主に地域材)の挽きを業務とし家の建築はやっていませんので建築の依頼はお受けできませんが、山梨県、東京都など近県で、信頼できる大工さん・工務店さんを紹介することは可能です。
※この記事の情報はあくまで参考までとしてお読みいただき、建築等についての責任は一切負えかねますのであらかじめご了承ください。