※この記事は2024年9月に公開したものを加筆、修正したものです(クビアカツヤカミキリの被害のことと、ナラがれの原因であるキクイムシのことを追記しました)。

建材や家具材になる樹木や木材には、穴を開ける虫がいます。穴が開けば見た目が悪くなるだけでなく、材としての価値が下がることもあるため、製材所ではできるだけ避けたい存在です。
そもそも、なぜ虫は木に穴を開けるの?
そもそもなぜ虫は木に穴を開けるか?もちろん、遊びで穴を開けているわけではありません。
ある種の虫には木はごちそう。「食料」となり、「住まい」となります。
大きく分けて、
- 幼虫が成長するために木を食べながら穴を開ける
- 産卵や幼虫の成長場所として、親が木に穴を開ける
場合があります。
チョウの幼虫は葉の上で成長するため、外敵に見つかるリスクがあります。それに比べると、木の中は誰にも見つからず、かつ周りは食べ物だらけ。かなり優れた生存戦略と言えます。
ここでは、木材に穴を開ける代表的な虫を紹介します。樹種によって付きやすい虫が違うことや、製材所で実際に行っている対策など、材を扱う大工さんや木工作家さんにも役立つ情報をまとめました。
キクイムシ・ヒラタキクイムシ・カシノナガキクイムシ(ナラ枯れ)
製材所で木材の虫害を考えるとき、無視できないのがキクイムシ類です。
キクイムシは親が木に穴を開けて卵を産み付け、幼虫が育ちます。朽ち木だけでなく生木も食害するため、森林害虫としても有名。

キクイムシは杉の原木でもよく見られます。皮を剥くと小さな穴があり、キクイムシのおがくずが詰まっています。



近年、ナラ枯れが広がり、ミズナラやコナラなどの被害が問題になっていますが、これもキクイムシの一種、カシノナガキクイムシが原因です。本種が運ぶナラ菌という木にとっても病原菌が、大きな木を枯らせてしまう、いわば「樹木の伝染病」です。ナラ菌(学名:Raffaelea quercivora:ラファエレア・クエルキボーラ)は細菌やウイルスではなく、カビやキノコの仲間である糸状菌(しじょうきん)の一種です。


余談ですが、キクイムシは農業をする虫と言われています。木材の穴の内壁に菌の畑を作って、育った菌を食べて育ちます。育てるのは、共生菌類(アンブロシア菌)という菌です。ナラ菌とは異なります。
キクイムシは「養う菌」と書いて「養菌性昆虫」と呼ばれ、菌嚢と呼ばれる菌の胞子や菌糸が入った袋の器官をもっていて、衰えた木に穴を開けて、菌を木のトンネルに運搬、植え付けを行います。それで育った菌を、子どもに食べさせるのです。
木の主成分はセルロースやリグニン。実は動物も昆虫もこれを消化して栄養素を利用することは基本的にできません。分解酵素を持っていないからです。しかしキクイムシは、菌に分解させてそれを食べています。カミキリムシやシロアリもそうです。
さらに、キクイムシは、オスとメスの子育てが分担されています。卵が1週間ほどで孵り、幼虫は穴の壁で増えた共生菌を食べて蛹になって羽化しますが、その間、メスの親は穴の中で菌を育て、オスの親は穴の入り口、樹皮近くにいて外敵、雑菌の侵入を防ぎます。さらに、ある文献によれば、腹部を細動させて換気も行っているとか。
実に見事な生存戦略です・・・が、製材所からすると、感心してばかりはいられません。問題は、穴の開くのをどう防ぐかです。

樋口製材では経験的に、皮を剥けば被害を受けにくくなるので、原木が届いたら早めに皮を剥きます。
皮を残したままにしておくと、カミキリムシの幼虫など木を食べる虫が中に入ることが多かったり、原木が乾燥すると皮を剥がしにくくなるためです。
それでも、キクイムシ類やカミキリムシ類による被害を完全に防ぐのは簡単ではありません。
木の皮は毎日たくさんでますが、地元の果樹園、牧場などで再利用してもらっています。今日も近くの果樹園さんに運びました。
カミキリムシ(クビアカツヤカミキリ、テッポウムシなど)
カミキリムシは幼虫が木材を食べて育ちます。親が木に卵を産み付け、卵から羽化した幼虫は、みずから木に穴を空けながら進みます。
カミキリムシの幼虫が食べる木はどれでもよいということではなく、カミキリムシの種ごとに食べる木は決まっています。広葉樹、バラ科、ウコギ科、マツ科など、それぞれに特定の「宿主」があります。
「宿主」や「ホスト」とは、その虫が幼虫時代に利用する植物のことです。
日本には約800種のカミキリムシが知られており、日本に自生する多くの樹木が、何らかのカミキリムシの宿主になっています。


たとえば、近年問題になっているクビアカツヤカミキリ(外来種)は、サクラ、モモなどのバラ科樹木を食害します。

材に比較的大きな穴を開ける虫はむかしから「テッポウムシ」と呼んできました。主に大型のカミキリムシの幼虫を指しますが、地域によっては大型のタマムシの幼虫を含めて呼ぶこともあります。

こちらは、スギカミキリ、ヒメスギカミキリはスギ、ヒノキを食害することが知られてます。

ベニカミキリ、タケトラカミキリは竹を食害します。

ルリボシカミキリはケヤキやクヌギ、桜などの広葉樹を食害します。
タマムシ
タマムシもカミキリムシと同じく幼虫が木の中で育つ昆虫です。
特徴は成長に長い年月がかかるということ。たとえば、ウバタマムシなど大型のタマムシはマツ科をホストとしますが、新築の家の柱や梁から穴を開けて出てくることがあります。伐採前か丸太の土場で産卵され、羽化したものと考えられます。
タマムシはもともと幼虫期間が長く、さらに材が乾燥するとさらにその期間が長くなるため、建築5年後に家の材からタマムシが羽化した例もあります。その場合、直径1cmぐらいの穴が空いてしまいます。
ただ、その場合には家の強度に問題が起こるほどの問題になることはまれなようです。実際、古民家では大きな穴の空いたクリ材が普通に柱に使われていたりします。


シバンムシ
シバンムシもキクイムシ同様、建材や仏具を食害します。
日本にはケブカシバンムシ、オオナガシバンムシ、マツザイシバンムシが生息します。
シロアリ
シロアリは製材品に穴をあけることはほぼなく(管理の問題であるため)、製材で問題になることはありまえsんが、木材を食害する虫としては有名ですので、触れておきます。
建築後の家で部材が濡れていたり湿っている期間が長いと材の中に巣を作り材をボロボロにします。アリという名がついていますが、実はアリとは関係のない種類です。アリはハチ目ですが、シロアリはゴキブリ目です。
以上、製材で問題となる虫の穴についてでした。森で育った木をなるべく良い状態で利用するため、経験と技が製材を支えています♪

