漁港で新鮮な魚が手に入るように、山間部で良材が手に入ります。原木市(いち)から直接仕入れて挽く製材所は、比較的安価に木材が変える場所です。
柱や梁、フローリング材などいわゆる『新築の木材』は、地方の工務店・大工さんなら地元の製材所で注文することも多いです。好きなサイズ・樹種で注文しておいて、立ち寄った折にできあがった材をトラックに積む・・・こんな風景が日常的です。
ですが、これは全国どこでもそう、ということではないようです。とくに首都圏など山間部から離れた都市部だと、地域材・県産材は身近ではない場合も。
とはいえ、だから手に入らないということではありません。運送トラックを持っている製材所に頼めば、遠くでも配達可能です。製材所は原木仕入れの直売なのでの材単価はリーズナブルである場合が多く、運送費を含めても安くつくことも。『国産材を使用している』ことが施主さんへのPRポイントにもなり、樋口製材(山梨県韮崎市)も都内からの注文をよくいただきます。
ここでは、首都圏の工務店、建築士さんが、地方の製材所から材を買うメリットや注意点・運賃をまとめました。山梨県で山梨県産材を挽いている「樋口製材」のケースで解説♪
目次
参考情報:樋口製材が扱う山梨県産材の製材品一覧と価格はこちら。
地方の製材所から材を買うメリット
地方の製材所から材を買うメリットをいくつかご紹介します。
安価
原木市から直接仕入れて挽く製材所は、比較的安価に木材が変える場所です。
時代的背景もあります。昔は外材に比べ国産材・地域材は高価でした。そこにはどうしても林業従事者による伐採、運搬、製材所での製材など人の手間がかかったからです。「国産材は高い」といったイメージを持たれている方は今も多いかと思います。
しかし、外材の流通量が減って価格が上がったウッドショックを経た現在、外材と国産材の価格差は少なくなりました。場合によっては同じ目的の材を仕入れるのに、国産材の方が安いこともあります。
実際に、運賃を含めても安くついたとお客様から言われることもあります。運賃については後述します。
原木を直接仕入れて挽く製材所は国産材価格や時勢を敏感に反映するアンテナとも言え、今は製材所から新築材を仕入れるのがお得な時代です。外材が高騰したウッドショックの後、期せずして国内需給体勢が整ったとも言われ、国産材の価格は安定しているようです。以下の記事もご覧下さい。
『国産材使用』が施主さんへのアピールになる
『せっかくなら、輸入材ではなく国産材がいいな』 そう考えている施主さんは少なくないようです。
単に『国産材です』と紹介するのではなく、『この材は山梨で育った材です』など具体的な産地を伝えられるのも、施主さんのワクワク感、家への愛着を高めてくれます。
すべての製材所が国産材、地域材を扱っているわけではありませんが、多くの製材所がその地域の材を挽いています。樋口製材でも山梨県産材を扱っています。
以前、当社に来られてウッドデッキ材を買われた神奈川県横須賀の方は、以下のように話されていました。
「ずっと国産材がいいなと思っていて、ウッドデッキも国産材でやりたくて」
「ウッドショックと聞きますが、国内林業にとってはチャンスなのかな。切りどきを失っていた国内の木が今はどうなってるのかな、と興味もあって」
樹種が選べる〜豊富な木の種類
日本ならではのヒノキ、杉を始め、山で採れるさまざまな樹種から挽いてもらえるのも製材所のメリットです。
梁、柱、桁、板が新築木材のメインですが、これらはヒノキや杉、アカマツで注文を受けることが多いです。土台にクリを希望される方もいます。クリは市(いち)に出るタイミングにより納期が変わりますが、納品可能です。ヒノキや杉は常に市に出ているので、タイミングで納期が変わることはあまりありません。
樋口製材で手に入る樹種一覧は後述します。
無垢板、無節、特一などを選べる
無垢材、特一、無節など希望の品質を選択できるのも、地場の製材所ならでは。
木のフローリングは肌触り、素足での歩き心地がよく、インテリアとしても温かく落ち着いた雰囲気を演出してくれますが、「国産ヒノキor杉」の「無節or特一(節あり)」と細やかに無垢材を選べるのも地域の製材所の強みかと思います。
樋口製材が扱うフローリング材については以下で詳しく解説しています。
自由なサイズで注文できる〜長尺が手に入る
製材所では建築向け汎用サイズですでに挽いてある在庫品で納品することもありますが(その場合すぐに納品可能)、注文を受けてから挽くことが主です。そのため、自由なサイズで材を注文することができます。
また、板張り用、フローリング用材は長尺、4mでの納品が基本なので、無駄なく木材を使うことができます。
地方の製材所で手に入る材種
前述の通り、製材所は選べる樹種の幅が広いです。
基本の建材としてはヒノキ、杉が多く使われる傾向があります。造作、化粧など部分的な用途では、アカマツ、クリ、カラマツなどが選ばれる傾向があります。どれも輸入材ではなく国産材です。外材を扱うところだと、なかなか手に入らない樹種と言えます。
ヒノキ
柱、梁、フローリング材、化粧板、テーブル板、無垢板などがご提供可能。丈三、120角、105角など汎用サイズは常備、それ以外でもご希望サイズで製材できます。
杉
ヒノキと同じく、柱、梁、板材、床板、野地板、貫などを、一般サイズ・ご希望サイズでご提供可能。
赤松(あかまつ)
日本では昔から曲げ強度が高いアカマツが家の梁に使われてきました。山梨の製材所では一般的に取り扱われる材です。
栗(くり)
時が経つほどに味わいが増すクリ。量は多く出回りませんが、早めにご注文いただければ一棟に必要な建材分の納品も可能です。日本の風土に合った建材と言えます。
唐松(からまつ)
中部地方や北海道に自生するカラマツは硬く腐りにくく、家の土台、梁、桁に使われます。出回る量は多くありませんが、樋口製材では比較的ご用意できます。ねじれにより狂うことが多いため、柱にはあまり使われません。
地栂(じつが)
日本の山で育ったツガで、米栂よりも硬い材です。針葉樹の中でも特に硬い材とされ、梁などに用いられます。
めったに原木市場にも並ばない希少材ですが、樋口製材ではタイミングによりご提供可能です。これを梁に使われる方がいます。
地方の製材所から材を買う際に注意すること
地方の製材所から材を買う際に注意することもまとめておきます。
乾燥状態
製材所から納品される材の乾燥度は建材屋さんが扱う建材と異なり、乾燥度合いが一律に担保されているわけではありません。そのため注文時には乾燥度合いの希望を伝えたり、現在の乾燥度を測定して確認することも必要。
建材は用途ごとに求められる乾燥度は異なります。必要な乾燥条件を満たしているかを事前に確認する必要があります。
樋口製材ではグリーン材でも乾燥材でも納品でき、価格は変わります。ぜひお気軽にお問い合わせください。
配達が可能か?
その製材所が材を発送ないし運送してくれるかを確認する必要があります。現場までの道が細い、車を横付けできないなど、配達できない場合があるので、事前に現場住所を伝えるなどして配達可能か確認します。
たとえば、樋口製材では3.5トンのトラックが入ることができれば配達できます。ユニック付きなので荷下ろしも人手を要しません。それより細い道の場合、2トンでの配達になりますが、配達容量が多いと、回数を分けての配達になり、その分運賃が増える可能性があります。
実際の運送賃はどれくらい?
運賃は配達場所や製材所により異なりますが、樋口製材の場合の運賃は以下です。
運賃 3.5トントラック(6〜7㎥程度積載可能)1回の配達運賃 | |
西東京 | 5万円前後 |
東京23区 | 6万円前後 |
横浜・神奈川東部 | 6万円前後 |
神奈川西部 | 5万円前後 |
埼玉(西部地域) | 5万円前後 |
埼玉(東部・中央地域) | 6万円前後 |
※場所により配達できない場合があります。
※2024年10月に試算したものです。時期により変わる可能性があります。
6〜7㎥というのが分かりにくい方のために、新築一棟で木材(柱、桁梁(横架材)、端柄材)をどれくらい使うかを参考情報として載せておきます。
- 37.6m3/棟 (木材保存 Vol.43-4、2017)
- 27.75m3/棟 (新潟県HP)
- 24m3/棟 (林野庁)
県産材は実際に何割の新築に使われているの?
建築用材等の自給率は55%*でしたので、ざっくり言うと半分の住宅は国産材で建てられている、残りの半分は外材で建てられている、ということになります。
富山県農林水産総合技術センター木材研究所によれば、一般住宅の国産材割合は1994年は14%だったのが、2017年には74%**でした。
**富山県の新築における木材使用量に占める県産材割合
このように昔は多かった外材による建築は減少し、国産材・県産材による新築づくりが増えている状況と言えます。それはウッドショックや物価上昇の兼ね合いで、外材との価格差が少なくなったことや都道府県の補助制度によるものですが、国産材による建築が見直されているということになります。外材に比べ、強度や見栄えで劣ることのない国産材。日本の風土で育った木を使った家づくりは理に適ったものです。
地方の製材所の製材品の利用事例
樋口製材(山梨県韮崎市)の製材品を使った利用事例を一部ご紹介します。
こちらは樋口製材の材の注文品です。
地元の建築士さんが家を建てたり、
サウナを建てたり、
古民家の改修をしたり、
平屋の家をDIYで建てたり、
などなど。
ぜひ、地域の製材所が挽いた材を使った新築づくりをご検討してみてください!